実習会[4]報告
概要
開催日程
2011年2月24日(木)13:00〜2011年2月26日(土)17:00
開催場所
惑星科学研究センター セミナー室
神戸大学六甲台キャンパス 自然科学総合研究棟 4 号館 8 階 CPS 内
主催
- 月惑星探査育英会 実行委員会
共催
- 衝突研究会
後援
- 惑星科学研究センター(CPS)/神戸北大G-COEプログラム
- 日本惑星科学会
- 宇宙航空研究開発機構
実習内容
「かぐや」「LRO」画像データの取扱
データの種類、ファイル構造、検索方法の説明、実習
課題演習:クレータ形状
(1-1) 新鮮クレータの形状に関する統計研究 (1-2) 二次クレータ分布を使った掘削過程に関する研究
課題演習:クレータ年代学
(1-3) クレータサイズ頻度分布計測による惑星表面年代の調査
講師
- 諸田智克(JAXA)
- 平田成(会津大)
世話人
荒川政彦,中村昭子,大槻圭史(神戸大),平田成(会津大),はしもとじょーじ(岡山大),諸田智克,小林直樹(JAXA)
参加者
- 参加者17名
- 学部生1名
- 修士課程5名
- 博士課程1名
- ポスドク3名
- 教職員7名
プログラム
- 2/24(木)PM 13:00〜18:00
- 開催の挨拶(小林)
- LOCからの諸注意(鈴木)
- リモートセンシング一般(平田): 1h
- 「かぐや」データプロダクトの概要(諸田): 0.5h
- 「かぐや」データ公開サーバの使い方(諸田): 1h
- サーバからのデータ入手実習
- LROC画像の入手実習
- 画像処理ソフトの使い方(平田・諸田): 2h
- ENVI(画像の閲覧,投影法変換,モザイク実習)
- 懇親会
- 2/25(金)AM 9:30〜12:00
- 画像処理ソフトの使い方(続き):
- ds9(画像の閲覧,距離計測,クレータカウント)
- 衝突実験研究からみた惑星表面クレータ研究の意義(荒川・中村): 0.5h
- 課題演習説明: 1.5h
- (1-1) 新鮮クレータの形状に関する統計研究(諸田)
- (1-2) 二次クレータ分布を使った掘削過程に関する研究(平田)
- (1-3) クレータサイズ頻度分布計測による惑星表面年代の調査(諸田)
- サンプル地域の解説(諸田): 0.5h
- 画像処理ソフトの使い方(続き):
- 2/25(金)PM 13:00〜18:00
- サンプル地域での解析実習
- 2/26(土)AM 9:30〜12:30
- サンプル地域での解析実習(続き)
- 2/26(土)PM 13:00〜17:00くらい
- 解析結果の発表会
- 嶌生有理・神前喬
- 鈴木絢子
- 石山謙・大隈裕一郎
- 末次竜・安井祐貴
- 保井みなみ・長勇一郎
- 全体質疑
- 閉会の挨拶(小林・荒川)
- 解析結果の発表会
講義風景
フルサイズ:TansaJissyu_009.JPG
諸田講師:TansaJissyu_004.JPG
平田講師:TansaJissyu_003.JPG
成果レポート
実習会では3つの課題に対して5つのグループに分けて解析を行なってもらいました.最終日の午後にその成果の発表会を行いました.以下のレポートはその成果をまとめたものです.掲載許可が得られたものを順次公開しています.実習会参加者の努力が伝われば幸いです.どのレポートも秀作です.是非ご覧ください.
アンケート結果
現在10名の方からアンケートの提出がありました.以下の「(数字)」は人数を示します.
●本実習を知った経緯
- メーリングリスト(6)
- 指導教官からのメール(4)
●参加理由
- 内容に興味があった
- 自分の専門以外の知識を得たかったため(3)
- 探査データからどのようなことが明らかになるのか知るため
- データ解析がいかに大変か体感するため
- 自分の研究にも関わるテーマであり応用が期待できる(3)
- クレーター年代学に興味があり,自分で決定してみたいと思った(2)
- ENVIの上達
- 惑星上のクレーター形状の解析方法の習得
- 探査データを扱うことについて以前から興味があった
- 諸田先生の講義を受けられるため
●実習難度
- 丁度良い(9)
- 進行が早く聞き落とすとついて行けなくなるためやや難しい(1)
- 月やクレーターに関する知識が乏しかったため座学の方は難しく感じた(2)
●講師・TAに求めるもの
- 論文にできるような本格的なテーマがやりたい.
- とても親切で丁寧に教えていただきました.ありがとうございました.
- Webでも月,クレーター等に関する参考文献を事前に挙げて頂けたらもう少し背景の知識を持って実習に参加できたと思います.
- 講義内容を紙で配布して欲しい
- 講義のスライドファイルが欲しい(2)
- 諸田先生のエクセル表のおかげで測定に専念できた
- 平田先生,諸田先生の講義内容もとても詳しく面白かった
- 当日の説明で追加された解析手順もwikiに反映させて頂きたいと思います(事前準備に無かったもの)
●自由記述欄
- 実習会当日のTAの仕事がより明確になると,もっと皆さんのお役に立てたと思う.
- 背景となる知識がなかったため専門用語で理解できないものがあったが実習自体は大変楽しかった.
- 二次クレーターを見分けるのに苦労した.これからクレーター年代学と聞いたら,大変な作業をして得たものなのだと思い,ありがたく使いたいです.
- 実際にクレーターをカウンティングするのが大変な作業だということが分った.また,人によって結果に揺らぎが発生することがよくわかり,人を代えて統計的にする必要があるのではないかと思った.今後異なった視点から議論することが可能になった.3日間の実習ありがとうございました.
- 実習は解釈が難しかったが楽しんで取り組むことができました.講師の方とも他の方とも打ち解けあえて楽しかったです.
- 3日間あっという間でしたが,なかなか楽しかった.3つの課題は均等に人数配分すべきだったのでは?
- 非常に楽しい実習でした.大小様々なクレーターの断面を扱うことができたのは勉強になりました.講師,事務局,LOCの皆様ありがとうございました.
- 単なる練習でない課題なところがよかったです.自分で手を動かすことで理解が深まったと思う.すごく勉強になりました.
- とても勉強になりました.
●今後取り上げて欲しいトピック
- 火星のバレーネットワーク,lava flow
- Cassini探査機のデーター解析
- 緯度経度情報,標高情報等を用いた月面地図の作成
- 地球
実習会に参加して
石山 謙(東北大学理学部 宇宙地球物理学科 4年)
私はかぐや衛星の観測データを用いて解析を行っており、クレーターを用いた研究を行っている。しかし、クレーターに関して、私はまったくの素人であるため、いろいろと勉強しないといけないと思っていた。そこに指導教員からこの解析実習会の連絡を受けたため、様々な収穫があると思い今回参加することを決めた。
私は初めて他大学でこのような実習会に参加したため、とても緊張した。また、実習会のTAにもなっていたのでとても不安を抱いていた。しかし、いざ参加してみると、優しい方ばかりで安心して実習会に参加でき、大変おもしろい実習会であった。この実習会に参加するにあたり、最初に驚いたことがあった。それは諸田先生だ。何しろ若いのだ。はじめ拝見した時は、今回参加する学生かと思ったほど若い。しかも、いざ実習会がはじまり、わからないところがあれば、丁寧に教えてくれる優しい先生であった。こんなに若い先生がいらっしゃるとは思っていなかったので、自分にとっては衝撃的で、内心、こんな先生になれたらいいなぁ・・・と思った。
今回の実習会では、「クレーターサイズ頻度分布計測による惑星表面年代の調査」を行った。内容としては、DS9というソフトを使って月の任意の領域のクレーターサイズごとの数を調べていき、craterstats2というソフトで月の表面年代を推定することを試みた。実際にやってみると面白い作業であった。面倒な作業はすべてソフトがしてくれるので、ただ単に私はクレーターの縁に沿うような円を描いていくだけであったが、地味でもなぜか夢中になってしまうそんな作業であった。私のほかにも同じ作業をしていた人は多くいて、中には先生をうならせるほど短時間で恐ろしいほどの数を処理してしまう人もいたので、それほど熱中できてしまう作業だったのだと今振り返ると思ってしまう。そんな作業をしてでてきた結果は、とても面白いもので、最後に同じ作業をしていた人たちの結果を交えると、解析した領域の月の火山活動の歴史がわかり、数日間でこんなことができるなんて思わなかった。むしろ、この実習で終わるのではなく、今後も続けていきたいとも思った。また、来年もあれば参加してみなくなる実習会であった。
私は、この実習会で新しい様々なことを知ったので、大変勉強になり、今後の研究にも役に立つと思った。そんな機会をくれた先生方やスタッフ方へこの場をかりて感謝したいと思います。どうもありがとうございました。
長 勇一郎(東京大学理学系研究科 地球惑星科学専攻 修士課程2年)
私はかねてより惑星探査によるリモセン画像の解析と惑星科学における年代学に興味があり、本実習会に参加した。
本実習会では、月探査衛星かぐやの地形カメラ(TC)によって取得されたクレーターデータをENVIおよびds9と呼ばれるソフトウェアで解析した。具体的な実習テーマは三つに分かれており、私はTC画像を用いたクレーター年代学を選択した。ここでは、オリエンターレ盆地の年代をクレーターカウンティングに基づいて推定するという課題が出された。
実際のクレーターカウンティング作業は、月面画像の上にひたすら円を描いていくもので、皆無言で作業に没頭していた。月面の画像を拡大していくと、小さいクレーターがどんどん見えてくる。あまりの多さに圧倒されてしまった。計算してみると「小さい」クレーターでも優に100メートル以上はあった。実際に月の表面に降り立ったときに見えるかも知れない、巨大な孔が沢山開いた荒涼たる世界をイメージして、「惑星世界は凄いな」となにか素朴に思ってしまった。
また、私などは仕事が雑なので、「こんなので本当に大丈夫なのかな」などと思いつつ、数え上げたクレーターのサイズ頻度分布をプロットしてみると、上手い具合に38億年の年代を示すアイソクロンに乗ったのだった。これには感動した。ただしクレーターカウンティングには、「直径のトレースが5%ずれると5億年ずれかねない」「サイズ頻度分布のフィッティングはコツが必要」「窪地はあるがクレーターなのかどうか…」など、悩ましい要素が幾つもあった。「言うは易く行うは難し」という言葉は自身の研究生活で身に染みていたつもりだったが、「クレーターを数える」という単純明快の言葉の中に、これほどの豊富な内容を含むのかと改めて感嘆した。
また、私の選んだ課題では二人一組で3グループに分かれた。実習会最後の発表会では、各々のグループで算出したクレーター年代が比較・議論され非常に盛り上がった。
この実習を通じて、重要な手法の実際を体験できたこと、様々な大学の先生や学生と知り合いになれたことは非常に有意義に感じたし、何よりとても楽しかった。この場を借りて、本実習会の開催に際してお世話になった皆様にお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
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References:[第四回実習会] [FrontPage]