「AKATSUKI」data assimilation

あかつきデータ同化が明らかにする金星大気循環の全貌

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学術研究員(PD)募集中(締め切り2019.8.30) [詳細]

研究の背景・目的

金星大気の循環構造は今日においてもあまりよく理解されてはいない。とりわけ高度45-70km付近にある分厚い雲層のため、大気下部の状況はほとんど未知である。金星大気循環の最も顕著な特徴としては、「スーパーローテーション(4日循環)」、すなわち、雲層上部で約100m/s(4日で金星を一周する風速)に達する高速東西流の存在がある。これは金星本体の自転(周期243日)の数十倍の超回転状態であり、ゆっくり自転する固体惑星から大気へと角運動量を汲み上げ、これを維持する循環構造の解明が気象学の基本的な課題として残されている。

このような状況に対し、我が国の金星探査機「あかつき」は、金星大気に関する世界初の本格気象衛星として金星周回軌道に投入され、4種類の撮像カメラ群によって金星大気の異なる深さの情報収集を行ってきた。「あかつき」探査以前、金星大気の観測は断片的であり、一方、対比すべき金星大気数値シミュレーションモデルは、表現するべき循環構造が未知なため、手探りの状況にあった。

しかし、「あかつき」で得られた鮮明な画像と、我々が開発を進めている、地球シミュレータ上の金星大気大循環モデル(AFES-Venus)による高解像度数値計算結果との間には、驚くべき類似性が示されていた(図1)。観測とモデルの比較が可能であることが示唆されたのである。本研究の目的は、今日的な方法の導入によりモデルと観測との比較を実現し、モデル開発を促進し、金星大気の循環構造の謎(スーパーローテーション)に迫ることにある。

図1

研究の方法

「あかつき」観測・解析とAFES-Venusの開発・数値実験とを「データ同化」の手法を導入する(Sugimoto et al., 2017)ことにより融合・推進し、観測と矛盾せず力学的に辻褄のあった金星大気大循環場の生成を実現する(図2)。「あかつき」による電波掩蔽観測、撮像画像群とそこから生成される雲追跡風ベクトルを活用、さらには、雲・放射過程など素過程モデル群を開発導入し「あかつき」観測シミュレーションを実現することによりこれを進める。

図2

期待される成果と意義

データ同化で得られた大気場の解析により大気擾乱の存在と構造、物質輸送と雲構造を明らかにし、 その理解の上に金星大気の子午面循環と角運動量輸送を掌握、スーパーローテーションに至る金星大気の構造を明らかにすることを目指す。本研究での試みと、精錬される「『あかつき』金星気象データセット」は、金星大気ならびに金星を足がかりにした惑星大気一般の理解への礎となるだろう。