アブストラクト |
本研究で我々は、圧縮性をもつ高粘性流体の熱対流の数値シミュレーションを行い、断熱圧縮とモデル形状が巨大地球型惑星「スーパー地球」のマントル対流にどのような影響を与えるかを調べている。シミュレーションモデルとして2次元の直方体あるいは半円環形状の容器をとり、底面からの加熱によって駆動される熱対流を、非弾性流体近似(truncated anelastic liquid approximation; TALA) のもとで解く。またモデル化する惑星のサイズに応じて、断熱圧縮の大きさ、熱対流のレイリー数、およびモデル流体の熱力学量 (熱膨張率と基準密度) の深さ分布を変化させる。惑星サイズを最大で地球質量の10倍まで変化させて計算した結果、断熱圧縮は惑星が大きいほど熱対流に強く影響することが確認された。その例として、質量が地球より3倍程度以上大きい地球型惑星のマントル内では、核・マントル境界から発生する高温プルームの活動が、モデルの形状によらず大きく抑制されることが考えられる。また Boussinesq (あるいは非圧縮性) の場合の熱対流に断熱圧縮の効果を適切に取り入れることにより、熱対流の活発さと惑星質量との間のスケーリング則を構築した。このスケーリング則に基づくと、惑星表面の低温熱境界層に発生する応力のレベルは惑星サイズにほとんど依存しないことが分かった。このことは、地球より大きな地球型惑星だからといってプレートテクトニクスの発生が促進される訳ではないことを意味しているのであろう。 |