アブストラクト |
初期太陽系で最初に固化した岩石であると考えられている Ca-Al-rich inclusion (CAI). その 200 万年後に固化したとされるコンドリュール. 近年, 両者の物質 の「同時形成仮説」を示唆する岩石学的, 年代学的結果が次々に示され活発な議 論がうまれている.
仮に CAI やコンドリュールの形成機構にとって複数回加熱溶融イベントが一般的 であったとしよう. 両者が同時に形成後,この複数回加熱溶融イベントを経験し たとする. このイベントによって年代がリセットされてしまった鉱物から得られ た年代からは, 最初の固化溶融イベントの年代を知ることはできない. つまり, これまでの両者の年代差とは,最初の固化イベントの年代差ではない可能性が高 いといった論点だ. 仮に同時形成が一般的であっても上記論点に注目して年代学 を展開しなければ真の年代学となりえないのかもしれない.
このように両者の形成関係は, 「隕石の年代学とは ?」という論点においてター ニングポイントになってしまう可能性が非常に高いと考えられる.
本講演では、これまでの隕石物質科学の研究から得られた細粒 CAI (凝縮起源), 粗粒CAI (溶融起源), コンドリュール (溶融起源) の岩石学的, 同位体的研究の 結果を紹介し, 幅広く年代学について概観する. そして, 最新の CAI やコンド リュール年代学の結果を紹介し, その意義や今後の課題について議論したい. |