アブストラクト |
近年の大型並列計算機の発展によって, 高解像度全球大気計算で用いられる格子幅は, ラージエディシミュレーション(LES)が対象とする空間スケールに迫りつつある. 従来的な全球非静力学大気モデルの力学スキームでは, 全体で 2 次精度の格子点法がよく用いられるが, 将来的な全球 LES を見据えたとき, 低次精度の流体スキームが問題になる可能性がある. Kawai & Tomita (2021) では, 大気境界層乱流の LES において, 移流項の離散誤差が乱流モデルに伴う渦粘性項の効果を卓越しないために要求される離散精度を検証し, 7-8次精度程度必要であることを示唆した. 格子点法の枠組みで高精度化を行う場合に, ステンシルの拡大によるデータ局所性の悪化や有限体積法では定式化が複雑になる等の問題がある. そのため, 現代的な計算機で計算効率が良く・高精度化が単純といった特徴を持った不連続ガラーキン法(DGM)に注目している. 大気計算に対する適用性を調べるために, DGM に基づく領域 LES モデルを構築し, DGM の数値特性の理解を深めてきた(Kawai & Tomita, 2023). 最近では, 湿潤過程の導入や立方球面座標を用いた全球モデル化も進めている. これらの我々の取り組みの中で, 本セミナーでは, 大気LES で必要とされる数値精度の知見に加えて, DGM に基づく全球 LES モデルの定式化やテスト計算の結果を紹介する. |