アブストラクト |
原始惑星系円盤中のガスは微惑星形成やガス惑星形成を考える上で非常に重要な位置を占める。そのため、惑星形成の理解には円盤ガスの物理、特に散逸過程の理解が必須である。円盤散逸過程のうち、円盤の孤立系において重要と考えられる物理機構として、中心星への粘性降着と中心星からの紫外線加熱による光蒸発が考えられてきた。しかしながら一般には、星は星団内で形成されるため、円盤ガス光蒸発の紫外線源として、周囲の環境は無視できない。特に原始惑星系円盤近傍に大質量星がある場合、大質量星からの紫外線が円盤ガスを暖める上で支配的になると考えられる。このような系を調べることは、普遍的な円盤進化を知る上で重要である。本研究では、円盤近傍の大質量星を紫外線源として考慮した光蒸発と、中心星への降着による円盤面密度の進化について一次元拡散方程式の数値計算を行った。その結果、光蒸発は中心星のみを考慮した場合より円盤外縁部で効果的となり 10^6 年程度で円盤半径が数十AUまで収縮すること、大質量星からの距離によってその円盤半径が変化することがわかった。質量放出率は ~ 10^{-7} M_sun /yrであった。また、このモデル計算の妥当性を検証するために、数値計算の結果をOrion星雲Trapezium星団内の原始惑星系円盤の観測と比較した。その結果、円盤半径と大質量星からの距離の相関を再現することがわかった。また、近傍に大質量星がある場合、極紫外線が光蒸発流を電離し、円盤周囲に電離面が形成される。我々は、この電離面の位置を球対称一次元数値流体計算により求め、円盤からの質量放出率と円盤の大質量星からの距離に対して、どのように依存するか調べた。その結果、質量放出率を 10^{-7} M_sun /yrとしたとき、計算結果は、観測されると大質量星からの距離と電離面の位置をよく再現することが分かった。本研究から、星団内における原始惑星系円盤ガスは光蒸発と中心星への降着により散逸していることが支持される。また、星団においては数十AU以遠ではガス惑星が形成されにくいこと、微惑星形成においてガス散逸の効果を考慮すべきであることが示唆される。 |