アブストラクト |
初夏の中国大陸上では,北緯40度付近を境に温暖な亜熱帯気団と比較的低温な寒帯気団が分布しており,亜熱帯気団の内部は南側の湿潤なモンスーン気団と北側の乾燥した大陸性気団に分けられる.そのモンスーン気団と大陸性気団の境界に梅雨前線が形成され,その梅雨前線は恵みの雨をもたらす一方,大規模な洪水をもたらす.しかし,梅雨前線に伴うメソスケールの降水システムの観測的研究は,日本や台湾付近では数多く行われてきたが,中国大陸上ではほとんど行われていない.
本発表では,1998年の梅雨期に中国大陸上の梅雨前線帯内部の降水システムをターゲットとして行われた GAME/HUBEX という観測プロジェクトで得られたデータを使用して,中国大陸上の梅雨前線帯内部にどのような降水システムが形成されていたかを明らかにする.そして,中国大陸上の梅雨前線は季節進行に伴い,その位置が刻々と変化するが,それに伴い梅雨前線帯内部の降水形成機構にどのような違いが見られたかを比較する. 最後に,中国大陸上の梅雨前線に伴う降水システムが気候学的にどのような役割を果たしているかを議論する. |