セミナー: CPS セミナー
日時: 2023 年 4月 3日(月) 15:00-17:00
場所: 神戸大学惑星科学研究センターセミナー室 及び オンライン (ハイブリッド開催)
講演者1: 寺田 直樹(東北大学大学院 理学研究科 教授)  
タイトル: "膨張惑星大気のDSMCシミュレーション"
要旨: 近年の理論研究により、強いXUV放射に曝された惑星大気の熱的散逸は赤外活性分子による放射冷却 (Yoshida and Kuramoto, 2020, 2021; Yoshida et al., 2022) や電子遷移反応に伴う原子の放射冷却 (Nakayama et al., 2022) により抑制され、熱的散逸率が大きく減少することが示されている。この熱的散逸率の大幅な下方修正は、これまで構築されてきた惑星大気の標準的な進化シナリオに再考を迫るとともに、惑星大気の初期進化フェーズにおいても非熱的散逸が重要な役割を果たした可能性を示唆するものである。現在の地球の数倍程度のXUV放射に曝された地球類似惑星の大気は、遅進流体力学的散逸状態に陥って膨張し、大気上端が惑星半径の数倍以上に達することが流体モデルにより予測されていた。本講演では、遅進流体力学的散逸状態にある膨張惑星大気に非熱的散逸を考慮することにより、膨張大気が冷却して収縮すること、熱的散逸率が非熱的散逸率の増加に応じて減少することをDSMCモデルを用いて示す。
キーワード: 大気散逸、非熱的散逸、膨張大気
講演者2: 吉田 辰哉(東北大学大学院 理学研究科 日本学術振興会特別研究員 PD)  
タイトル: "還元的原始地球大気の流体力学的散逸と進化"
要旨: 近年の宇宙化学的研究から、地球マントル物質の同位体組成は始原的隕石の中で最も還元的なエンスタタイトコント゛ライトに酷似していることが示されている。このことは形成期の地球に、金属鉄の還元作用によって H2 や CH4 に富む還元的原始大気が形成されたことを強く示唆する。還元的環境下では有機化合物の生成が効率的に進むことから、原始大気は生命誕生に繋がり得る前生命的化学進化において重要な役割を果たした可能性がある一方、初期太陽の強力な極端紫外線放射によって駆動される流体力学的散逸や還元的化学種の光化学反応によって原始大気の質量と組成は刻々と変化することが予想される。本講演では流体力学的散逸に焦点を当て、大気散逸モデル計算結果と、そこから推定される初期地球大気進化シナリオについて紹介する。時間に余裕がある場合は初期火星における大気散逸との比較や、系外惑星大気への応用についても合わせて紹介する。
キーワード: 大気散逸、原始大気、地球
世話人: 林 祥介

参加方法:

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