セミナー: CPS セミナー
日時: 2016 年 11月 15 日(火)14:30-16:00
場所: 神戸大学惑星科学研究センター セミナー室
講演者: 小河 正基 (東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系 准教授)
タイトル: 岩石惑星の進化と火成活動・マントル対流結合系の力学
要旨: 惑星サイズは、その惑星の火成活動やテクトニックな活動を支配する重要な要素である。三次元球殻マントルの線形安定性解析からは、現在テクトニックな活動が停止しているように見える月のマントルは実際対流安定であるが、様々な活動が長く続いた火星以上の大きさの惑星では、マントルは現在でも対流不安定である事が示唆される。また、二次元火成活動・マントル対流結合系の数値シミュレーションからは、火成活動の起こり方も惑星サイズによって大きく変わる事が予想される。月では、マントル湧昇流による火成活動は数億年の時間スケールで起こる。しかしより大きな惑星では、火成活動はその原因である湧昇流を強化する(MMUフィードバック)ため、火成活動はより活発かつ間欠的になる。特に熱源となる放射性元素を多く含む初期の金星や地球内部では、マントル構成物質の高圧相転移のため高温の下部マントルからの湧昇流は間欠的となり、この湧昇流がMMUフィードバックによる激しい火成活動を引き起こす(バースト)。バーストは大規模なマントルの分化を引き起こすが、同時にマントルを強く撹拌もするため、全体として初期のマントルは均質化される。これらの効果にさらに、プレートテクトニクスの効果を加えると、地球のマントルの二段階進化モデルが得られる。初期段階では、バーストが頻発しプレート運動はカオティックになるが、後期段階ではバーストは治まり、より定常的となったプレート運動の結果、海嶺で生成した玄武岩地殻はコアマントル境界上に蓄積し、大規模な熱?組成的な水平不均質性を生じる。今後さらに惑星内部進化の理解を進めるためには、3次元球殻モデルの開発や惑星形成過程とその後の内部進化の関連を研究する事が鍵となる。
キーワード: 岩石惑星進化、マントル対流、火成活動、惑星サイズ
世話人: 林 祥介