日時: 2012 年 4 月 25 日(水) 15:00-16:00
場所: 北海道大学理学 8 号館コスモスタジオ
講演者: 坂谷 尚哉 (ISAS/JAXA)
世話人: 木村 淳
タイトル: 真空下における粉体物質の熱伝導率測定
要旨: 月や小惑星などの固体天体表層はレゴリスで覆われており,その熱特性について理解することは天体の熱的な状態や熱進化,更に将来の着陸探査機の熱設計のために重要である.真空下におけるレゴリスのような粉体の熱伝導率は 0.001 W/mK オーダーの極度に低い熱伝導率を持ち,粒径や空隙率,温度など様々なパラメータに依存する.
天体の地殻熱流量は現在の熱的状態を知る上で欠かせない情報である.アポロ熱流量観測では表層レゴリスの熱伝導率が測定されたが,熱流量プローブ挿入時のレゴリスの状態の変化によって,熱伝導率計測値は元の値と異なっている可能性が示唆されている.この補正のため,また将来の同種の熱流量観測のためには,熱伝導率のパラメータ依存性の調査が不可欠である.また,レゴリス層はその低熱伝導性のため,強い断熱層として働く.そのため,レゴリス層の存在は微惑星のような小さな天体の熱進化に大きな影響を与えると考えられる.しかし,微小重力環境でのレゴリスの状態は未知であるため,熱伝導率をモデル化しその範囲を制約する必要があるだろう.このようなバックグラウンドを念頭に置き,我々は真空下において粉体の熱伝導率測定実験を行い、 パラメータ依存性を調査することにより、粉体中の熱輸送メカニズムの理解,熱伝導率のモデル化を目指している.
本研究ではこれまでにモデル物質としてガラスビーズを用いて,粒径,温度,圧縮荷重依存性を調査してきた.本発表ではこれらの実験結果を紹介し,そこから示唆される熱輸送メカニズムについて議論する.
キーワード: 熱伝導率,粉体,レゴリス,熱流量観測,熱進化