日時: 2011 年 10 月 12 日(水) 15:30-16:30
場所: CPS セミナー室
講演者: 佐野 亜沙美 (日本原子力研究開発機構)
世話人: 保井 みなみ
タイトル: 中性子散乱実験と地球深部科学―ワズレアイトを一例として
abstract: 地球深部で何が起きているのか?それを理解するための実験的手法として、地球深部と同じ高温高圧条件を実験的に作り出して岩石や鉱物の相関係や物性の研究が進められてきた。現在、茨城県東海村のJ-PARC内、物質・生命科学研究施設(MLF)では国内初の高圧実験専用ビームラインPLANETが建設中であり、中性子散乱実験が高温高圧下における新たなプローブとして期待されている。地球科学に適用する上での中性子散乱実験の強みとしては、鉱物中の水素など、軽元素を‘見る’ことができる 透過力が大きい 磁気構造の決定 同位体を区別できること などがあげられる。本発表では、PLANETの概要を紹介するとともに、中性子散乱実験の一例として、マントル遷移層上部の主要構成鉱物であるワズレアイト(β-Mg2SiO4)の中性子散乱実験の結果を紹介する。
ワズレアイトには最大3 wt.%ほどのH2Oが含まれ、また水の存在下では弾性波速度や電気伝導度等の物性が大きく影響を受けることが指摘されている。しかし構造中のどこに水素がいるのかについては不明な点も多かった。今回、ILLのD20における中性子散乱実験により、ワズレアイトの構造中のごく微量な水素(D)を浮かび上がらせることに成功したので、その結果を報告するとともに、水の存在により引き起こされる物性変化のメカニズムについて考察する。
キーワード: 高圧、中性子散乱、ワズレアイト、マントル遷移層、J-PARC、PLANET