日時: 2010 年 3月 24日(水) 14:00 - 17:30
場所:

神戸大学自然科学総合研究棟 3 号館 508 号室
北海道大学理学部 8 号館 2 階コスモスタジオ(8-2-01)
(ビデオ会議システムを用いて中継予定)

講演者: 前野 紀一 (サイエンスアイ代表・北大名誉教授), 小野 丘 (北海学園大学)
タイトル: カーリングの科学: ストーンは何故曲がるのか
abstract: バンクーバーオリンピック競技種目でもあるカーリングは, 「氷上のチェス」 との異名を持つ知力と体力, そして緻密な技術を要するスポーツである. 競技 を白熱させる要素の一つは, 氷上で見せるカーリングストーンの曲がる動きで ある. しかしながらこのストーンの動作メカニズムについては, まだ十分な理 解が得られていない. 今回のセミナーでは, この氷上でのカーリングストーン の動作メカニズムについて, 二名の専門家に解説を行なっていただく.
第一部: スポーツとしてのカーリング概論 (小野 丘)
カーリングの歴史は古く, 16世紀のスコットランドにて発祥したと言われてい る. 競技として盛んになったのは戦後になってからであり, 日本においては 長野オリンピックを契機として一般に知られるようになった. 本講演ではスポ ーツとしてのカーリングの歴史と特色を紹介し, 氷上のカーリングストーンの 運動の様子を映像とともに解説する.
第二部: ストーンは何故曲がるのか (前野 紀一)
氷上でのカーリングストーンの曲がりの物理メカニズムに関しては,Jhonston(1981) の「圧力差モデル」、Shegelski達(1996)の「水膜モデル」、Denny(2000)の 「雪かきモデル」等、幾つか提出されている。いずれのモデルも、氷とスト ーンの摩擦係数が前面より後面で大きくなるためストーンの運動を曲げる外 力が発生すると考える。しかしこれらのモデルにはいろいろの不合理が指摘 されており、特に、曲がり幅がストーンの回転数に比例して増えるという結 果は経験とあわない。
今回紹介する「蒸発-摩耗モデル」はカーリングの最大の特徴である、デコ ボコの氷(ぺブル)、重さ20kgのストーン、およびストーンの底の形状(ラ ンニングバンド)、の3点に着目して組立てられた(Maeno,2010)。ストーン 前部と後部の氷摩擦係数の差は, ストーンの前半分が通過する時に発生した 薄い水膜が蒸発し, 氷面の温度が低下することによって生じる. このモデル では曲がり幅はストーンの回転数に依存しない。 講演では, これらのモデルについて解説し, モデル検証のために計画してい る実験の概要を紹介する.
参考文献: N. Maeno, 2010: Curl Mechanism of a Curling Stone on Ice Pebbles. BGR 28, 1-6, http://www.seppyo.org/~bgr/bgr.sjis.html