日時: 2009 年 2 月 23 日(月) 12:00-13:00
場所: 北海道大学理学 8 号館倉本教授居室,
北海道大学低温科学研究所実験棟 2F セミナー室,
自然科学総合研究棟 3 号館 506 号室奥のセミナー室,
(ビデオ会議システムを用いて中継予定)
講演者: 山田 耕 (早稲田大学)
タイトル: 降着円盤内でのタイプI惑星移動
abstract: 原始惑星系円盤中にある惑星の軌道は,円盤ガスとの重力相互作用によって変化する.一般に,この重力相互作用で発生した円盤ガス中の密度波により, 惑星は軌道角運動量を失い,中心星へと落下する.この過程は,タイプI惑星落下問題として知られており,巨大ガス惑星形成に対して大きな障壁となっ ている.しかし,これまでこの問題を扱った多くの研究は,等温の状態方程式を用いていた.最近,Baruteau & Masset(2008)や Paardekooper & Papaloizou(2008)によって断熱ディスクと惑星の重力相互作用が調べられ,その結果,惑星付近におけ るエントロピー分布の非対称性が共軌道上の密度変化を引き起こし,共回転トルクの大きさを大幅に変えることが明らかになった.例えば,負の傾きのエ ントロピー分布をもつ円盤では,惑星前方の共軌道に沿って運動してきたガス密度は周りのガス密度より大きくなり,後方の共軌道に沿って運動してきた ガス密度は周りよりも小さくなる.そのため,惑星にかかる共回転トルクは正を示し,惑星は外に動く.しかし,最小質量星雲モデルでのエントロピー分 布は正の傾きであるため,共回転トルクは負となり,惑星移動は内向きである. 一方,Kley & Crida(2008)は,降着円盤での惑星移 動について調べ,その移動方向は外向きであることを指摘した.彼らの数値計算は1例であったため,本研究では,降着円盤の構造(円盤の粘性率,温度 分布のベキ(T ∝ r-β)など)を様々に変えた時の惑星移動の応答をより詳細に調べる.我々の結果から,惑星にかかるトルクの円盤粘性の依存性 は弱いことがわかった.一方で,降着円盤の温度分布のベキが大きくなると,共回転トルクが正に大きくなり,惑星は外に行く結果となった.我々の解析 から,温度分布のベキ(β)が約3/7で共回転トルクが0となり,それよりも小さい値だと惑星は内側に移動する.この結果と観測された降着円盤の温 度分布のベキ(β=0.5-0.7)(Kitamura et al. 2003)を比較すると,降着円盤内では一般に惑星は外に移動すると推定さ れる.