CPS 天体観測実習

実習の趣旨

 「観測」は惑星科学や天文学における重要な研究手法の一つである。観測天文学では2つのアプローチがある。一つは、新しいアイデアを元に、既存の望遠鏡システムを利用することである。もう一つの手法は、独自の装置を開発することである。本実習では後者の基礎を学ぶことにより、観測天文学の基本を身につける。確固とした基礎に根ざした観測結果を提示することにより、汎惑星モデルの構築に貢献する。
 データ解析の実習は、国立天文台をはじめとして、いくつかの場所で行われている。一方で、光学設計や機械設計は、今までは「見様見まね」でしか伝授されておらず、その基礎を習う人もごく一部に限られている。観測装置が急激に大型化・複雑化とともに「観測をする人」と「装置を作る人」の乖離が始まっており、このままでは観測する人にとって装置がブラックボックス化してしまい、重要な成果を逃すことにもなりかねない。
 そこで、全国的にも例がほとんどない設計実習を行い、装置開発の基礎を学ぶことで、両者の垣根をできる限り低くし、手法を横断できる人材を育成する。本実習を通して多くの人に装置開発の楽しさと難しさに触れてもらいつつ、光学設計や機械設計の教え方が体系化されていくことを目指す。


次回の実習

未定

過去の実習

2011年度

  • 日程 2010年11月25日~11月27日
  • 場所 北海道名寄市日進157-1 名寄市立天文台/北海道大学大学院理学研究院附属天文台
  • 概要
    恒星・銀河・太陽系の講義・実習と可視光撮像分光装置(NaCS)を用いた天体観測実習を行った。実習プログラムは
    ・11/25 18:00-19:00 講義: 恒星
         19:00-26:30 実習: 測光観測解析
    ・11/26 18:00-19:00 講義: 銀河
         19:15-20:15 講義: 太陽系
         20:30-21:30 講義: 観測装置
         21:30-30:00 実習: 可視光撮像分光観測
    である。北海道大学と神戸大学の学生10名、講師4名、計14名で実施した。一日目は天候が悪かったので解析実習を行った。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した球状星団の画像の測光を行い、HR図を作成することで球状星団の距離と年齢を求めた。2日目の前半夜も曇天だったため講義を行った。後半夜には天候が回復したので、撮像機能のファーストライトを行い、木星、オリオン大星雲、近傍銀河の可視光スペクトルを取得することに成功した。

2010年度

  • 日程 2010年11月10日~11月12日
  • 場所 兵庫県神戸市灘区六甲台1-1 神戸大学自然科学3号館
  • 概要
     東京大学天文学教育研究センターの宮田隆志准教授を招き、機械設計について講義と実習を行った。講義内容は以下のとおりである。
     ・静的機械系、特に材料、変形、工作機械と図面について。
     ・動的機械系、特に回転と歯車、モーターについて。
     ・機械系と熱、特に低温の実現法、熱計算、熱膨張について。  実習の最後に、2010年度に完成予定の名寄望遠鏡の光学パラメータを使い、実際に製作が想定されている近赤外撮像カメラの機械設計を行った。また実習の最後に、各自が設計したカメラについて発表を行った。

2009年度

  • 日程 2009年12月16日 ~ 2009年12月18日
  • 場所 兵庫県神戸市灘区六甲台1-1 神戸大学自然科学3号館
  • 概要
     東京大学天文学教育研究センターの宮田隆志准教授を招き、光学設計について講義と実習を行った。講義内容は以下のとおりである。
     ・観測波長について。
     ・検出器の原理。
     ・幾何光学の基礎。
     ・屈折の原理。
     ・収差論。
     実習では光学設計ソフトOptalixを用いた。 実習の後半では、2010年度に完成予定の名寄望遠鏡の光学パラメータを使い、実際に 製作が想定されている可視撮像カメラと近赤外撮像カメラの光学設計を行った。また 実習の最後に、各自が設計したカメラについて発表を行った。

2008年度

  • 日程 2008年9月16日~2009年3月31日
  • 場所 名寄市立木原天文台および銀河の森天文台
  • 写真記録 名寄現地調査 (2008/02/23)  名寄環境整備&観測実習 (2008/03/16)  陸別環境整備&観測実習 (2008/03/18)
  • 概要
     北海道内の天文台と連携した教育研究および学生実習プログラムの開発を目的として, 北海道大学から各天文台間の情報インフラの整備, H 21 年度以降に計画している実習や教育研究に利用する機材の導入, 実習プログラムのプロトタイプの実施,を行った.
     情報インフラは「北海道宇宙観測ネットワーク」と称し, 北海道大学と北海道内の天文台を広帯域ネットワークで接続した. この情報インフラは, リアルタイムに観測データを共有・遠隔操作するための基礎となるものである. 連携先は, 名寄市立木原天文台, 名寄天文台 (建設中), 銀河の森天文台, および北海道大学付属苫小牧電波観測所である. 苫小牧と木原天文台は既存の回線利用し, 名寄天文台予定地と銀河の森天文台には回線を新規に開設した. なお, 名寄天文台は名寄市立大学を経由する形で情報インフラを整備し, 北海道大学から名寄市立大の間は有線ネットワークを, 名寄市立大から名寄天文台予定地までは無線ネットワークを用いた.
     学生実習プログラムとして, 各地天文台の望遠鏡を利用した望遠鏡操作および光学観測と, 観測機器のハードウェア/ソフトウェア製作の基礎の習得を予定している. それらの実習プログラムを行うために必要となる CCD カメラや各種フィルタ等の観測機材, および機器製作に必要不可欠な工具や測定機器を導入した. 実習プログラムのプロトタイプして, 名寄市立木原天文台と銀河の森天文台において望遠鏡操作および観測を実施し, さらに観測機器製作実習として雷観測装置や気象観測装置の製作を行った.

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Last modified: 10.12.24
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