アブストラクト |
2000年代、大気モデルは静力学平衡モデルから非静力学モデルへと発展した。全球非静力学モデルに雲微物理過程を搭載し雲を直接解像することで、対流雲スケールから大規模スケールまでの階層構造に対する表現力が格段にアップした。しかしながら、気候予測の不確実性の大きな原因の一つであるエアロゾルの間接効果は、数km格子での全球雲解像モデルでは未だ表現できていない。この先、更なるモデルの質的ジャンプを目指すなら、そのような効果を見積もることが可能な全球渦解像(LES)モデルであろう。実際、数mから数10m格子での領域渦解像モデルを使った数値実験では、上記の効果に関連する「浅い雲」の表現が表現可能であることは認識されている。一方で、現在使われている気象モデルで使われているLESは果たして理屈と整合的であるかどうか、はなはだ疑わしいと考えている。
本講演では、全球LESモデルへ向けたさまざまな問題を共有・再認識したい。次世代のモデル開発のブレークスルーには、LESそのものの問題だけではなく、これまで積み残してきた課題を丁寧に解決していくことが必要であろう。今、それらに再度チャレンジする時期に来ているように思う。同時に、その開発過程においては単純な実験設定に一旦回帰することも必要である。理研の気候チームで最近取り組んでいる、雲の自己組織化・階層構造などを軸に理想実験での知見も報告しつつ、今後のモデル開発の見通しについて、私見を交えながらざっくばらんに議論したい。 |