アブストラクト |
現在、ハビタブルゾーン(HZ)と言われる惑星表面に海を保持可能な軌道領域に多くの系外惑星が見つかっている。HZは、表面温度・大気CO2 量に対して負のフィードバックが働くような地球における炭素循環を仮定している。しかしながら、惑星形成論は、地球のような水に乏しい惑星ではなく、HZ内に形成される地球型惑星の多くは水に富み、惑星表面全体が海に覆われた惑星(海惑星)であることを支持している。よって、今後の地球型惑星の観測的特徴づけに向けて、HZ内の海惑星のハビタビリティの検討を進める必要がある。先行研究からは、海惑星が高温環境を持つことが示唆されている。これは海底にできるH2O の高圧氷が風化を阻害し、大気CO2 が除去されないためである。しかしながら、先行研究は海洋地殻からの熱フラックスによる高圧氷の融解を考慮していない。また、プレートテクトニクスを持つ場合、海嶺付近では大きな熱フラックスを持ち、高圧氷は容易に融解されると予想される。よって、本研究では、HZ内に存在するプレートテクトニクスを持つ地球サイズの海惑星を想定し、高圧氷の融解とそれに伴う大気CO2 の除去を検討する。そのため、高圧氷の融解と海洋底風化を考慮した全球的な地球化学的炭素循環モデルを構築し、様々な海洋水量における惑星気候の推定を行った。結果として、海嶺付近の高い熱フラックスは厚い高圧氷でさえも溶かすこと可能であり、海洋底風化によるCO2 の除去が行われることがわかった。また、先行研究の予測とは反対に、海洋水量が大きな地球型惑星ではCO2 に乏しい寒冷気候、つまり全球凍結状態に陥ることがわかった。これは、高圧氷の融解によって海底の温度圧力条件がH2O の融解曲線に支配され、風化が表面温度によらず、高い値を示すためである。また、それ以上の海洋水量を持つ地球型惑星では温暖な気候を保つことができない臨界海洋水量は、数10地球海洋水量と見積もられた。惑星形成論からは海洋水量の多様性が予期されるため、この結果は、たとえHZ内に惑星が存在したとしても、プレートテクトニクスを持つ系外地球型惑星は温暖な気候を持ちづらいことを示唆する。 |