アブストラクト |
木星や土星で観測される縞状の構造とそれに伴って吹く卓越した東西ジェットを 説明するモデルとして, 惑星大気表面の薄い層における大規模運動を考えるもの がある. 回転球面上の強制浅水乱流はそのようなモデルの一つで, 縞状の構造の 出現に加えて, 低緯度ほど大きな振幅の東西ジェットや, 極付近で顕著になる渦 的な運動などの再現に成功している (Scott and Polvani, 2007). ただこのモデ ルでは, 赤道において木星や土星で見られるような強い西風を再現できないこと が問題であった. これに対しScott and Polvani (2008)は, 強制浅水乱流におい て, 散逸過程としてレイリー摩擦ではなくニュートン冷却を採用することで, ロ バストな赤道西風を形成することに成功した.
本研究では, 上記の赤道西風が以下のメカニズムにより生じることを明らかにし た. まず, ニュートン冷却が導入されることにより球面浅水系の固有モードであ るハフモードの構造が変形し, 等位相線が緯度方向に西向きか東向きに傾く. こ の構造変形によって各ハフモードは帯状平均流の加速を起こす. ランダムな強制 によって励起されるハフモードによって生じる時間発展初期の帯状流加速を, 弱 非線型の理論に基づいた統計解析により評価した. 理論は赤道西風が生じること を予言しており, 赤道西風の加速には主にロスビーモード(ニュートン冷却に よって位相が西に傾く)が寄与している. 理論によって予言される帯状平均流の 時間発展は, 非線型シミュレーションより得られた, アンサンブル平均した帯状 平均流の時間発展と定量的に一致していた. |