アブストラクト |
近赤外線帯には、銀河の星間環境を調べる上で重要なスペクトルフィーチャーが数多く存在している。その中でも星間氷(H2O, CO2)による吸収からは、星間物質の温度、化学状態、輻射履歴といった星間環境の詳細な情報を得ることが出来る。しかしこれまでの観測では、様々な観測的な困難により、近傍銀河において氷の吸収はほとんど検出されていなかった。そこで我々が用いるのが、赤外線天文衛星「あかり」である。「あかり」の特徴の一つである、高感度の近赤外線分光観測は、近傍銀河における氷の研究を行うためには、非常に有用である。
我々は、「あかり」ミッションプログラム"ISM in our Galaxy and Nearby galaxies (ISMGN)"で取得された、近傍銀河122天体(211領域)の近赤外線分光観測データ(波長2.5-5.0um)を用いて、星間氷の系統的な探査を行った。その結果、観測した122天体中、36天体でH2O氷、9天体でCO2氷の吸収を有意に検出した。本探査によって、氷が晩期型銀河だけでなく、従来星間物質が少ないと考えられてきた早期型銀河でも検出されたことは注目すべき点である。また、H2O氷とCO2氷の空間分布を比較すると、CO2氷の方が銀河中心のより限られた領域でのみ検出されていることが分かった。本発表では、我々が行った近傍銀河における氷の探査の結果を紹介し、近傍銀河における氷が存在する星間環境について議論する。 |