アブストラクト |
近年の観測により木星大気では活発な雲対流が生じていることが知られるよ うになった. 木星大気の雲対流は, 地球大気の場合と同様, 大気の循環構造 や物質分布の決定に重要な役割を担っていると想像されているが, その具体 的な形態はまだあまりよく調べられていない. 従来の木星大気の雲対流研究 においては水の凝結のみを考慮した研究(Nakajima et al., 2000) が行われ てきたにすぎず, 木星大気中のアンモニアと硫化水素アンモニウムの凝結と 生成に伴う成層安定化効果と循環構造への影響はほとんど議論されてこなかっ た.
そこで我々は, H2O, NH3 の凝結と NH4SH の生成反応を考慮した木星大気の 雲対流構造の理論的考察として以下を行ってきた. (1)鉛直 1 次元の熱平衡 大気モデルを開発し, 水とアンモニアの凝縮と硫化アンモニウム生成反応に 伴う成層安定度への寄与を見積もった. (2)水平鉛直 2 次元の雲対流モデル を開発し, 水・アンモニア・硫化水素アンモニウムという 3 種類の凝結性 成分を含む雲対流がどのような構造を持つのかを数値的に調べた. 本発表では, これらの考察から得られた結果を紹介する. |