アブストラクト |
月の重心は幾何中心に比べ約2キロメートル地球方向にずれて いることが知られている.このずれは、表側の地殻厚が裏側より10 キロメートル程度薄いことで説明できる.これまで我々は、衝突率 不均質が月の地殻厚二分性をつくり、更にそれが原因で初期の月は 方向転換を繰り返したというモデルを提案してきた.実際に、衝突 ベースンや重力データから得られている地殻厚マップをみると、こ の仮説を支持しているように見える.一方で、Clementine、Lunar Prospectorのマルチバンド画像やガンマ線分光計などのデータは月 表層の元素組成が不均質であること示しており、月の幾何中心/重 心のずれは、単純な地殻厚の不均質だけでなく、より複雑な密度構 造を反映している可能性が考えられる.そのため、二分性の起源を 理解するためには、まずは表層構造をより正確に把握する必要があ る.月探査周回衛星SELENE に搭載される月面撮像/分光機器 (LISM)は、地形カメラ(TC)、マルチバンドイメージャ(MI)、スペク トルプロファイラ(SP) から成る.それらは、これまでの探査に比 べ約1桁上回る空間解像度で、月全球の光学観測を行う.その結果、 地形や表層の鉱物組成の理解を飛躍的に発展させるだろう.さらに、 蛍光X線、ガンマ線分光計による表層元素組成や、RISEグループに よる重力異常から推定される内部構造と相互参照することで、月の 二分性をより正確に定義できると期待される. |