アブストラクト |
足の下の出来事つまり地球内部のプロセスに関して,過去にどんなことがあって現在はどう進行中なのかを正しく理解し,将来はどうなっていくのか予測したいと願う.深層掘削(ドリリング)および孔内計測は,それを直接観測できる有力な手段であり,それと地表探査の組み合わせは地殻を観察する「望遠鏡」となる.これを武器として,我々の生活に密着した以下のような地球科学の諸問題に立ち向かうことができる.
・地質災害の被害軽減(地震,火山,地すべり等)
・地球環境問題(気候変動,CO2,廃棄物)
・隕石衝突の影響と生物の大量絶滅
・地下生命圏の実態と,石油生成や生命の進化に与える影響
・地球資源(石油,鉱物,地下水,ガスハイドレートなど)の探査と供給
ICDP(国際陸上科学掘削計画)は,国際的協力の枠組みでこれらの解明に取り組むことを目的として1996年に発足した.ドイツ,アメリカ,日本,中国,などが中心となって活動している.ここでは,ICDPのプロジェクトであるハワイ島の火山体掘削,雲仙火道掘削,ユカタン半島チチュルブ隕石孔,サンアンドレアス断層,KTB(ドイツ大陸深層掘削計画)での実験等々を概観する.また,日本では既に活断層や震源域での掘削が行われてきた.特に,1995年兵庫県南部地震に伴う淡路島・野島断層では,断層を貫くような掘削(最深1,800m)を行い,断層近傍の応力や熱流量などを定量的に把握するとともに,岩石コアによる断層破砕帯の構成物質などについて分析した.これらについて紹介し,陸上科学掘削の現状と今後の方向性を探りたい. |