セミナー: CPS セミナー
日時: 2023 年 12月 8日(金)14:00
場所: ネット会議システム (Zoom)
講演者: 浜野 洋三(神戸大学 海洋底探査センター 客員教授)
タイトル: マントル最下部の電気伝導度不均質構造の探査
要旨: 太平洋とアフリカの下の最下部マントルに存在する大規模なS波低速度領域(LLSVPs)は、地球初期から現在までのマントルダイナミクスの理解に重要な役割を果たすが、その起源については、今でも活発な論争が続けられている。この問題解決のためには、地震波速度とは別の情報として、マントル最下部のD”層の温度圧力範囲で相転移するペロブスカイト相(Pv)とポストペロブスカイト相(pPv)の分布と、LLSVPsとの関係を明らかにすることが役立つ。PvからpPVへの転移により電気伝導度は数桁ジャンプするので、D”層内の電気伝導度不均質構造を知ることで、上記の目的を達成できる。しかし、地球外の磁場変動をソースとして使う従来の電磁気構造の探査法では、地球表層の海と陸の分布による大規模な不均質を通して、マントルの最下部の構造を、地震構造と比較できる精度で探査することは難しい。 本発表では、D”層直下のコア表面の磁場をソースとして用い、D“層の不均質構造で作られる磁場を、地表で定常磁場として観測する、新しい手法を用いて探査を行なった結果を示す。インバージョンで決定するモデルパラメターは、D”層内の磁気拡散率の球面調和関数展開係数とソースである軸対称トロイダル磁場の展開係数とし、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法によって、これらのパラメターの分布を見積もった。またモデリングの際に繰り返し用いる電磁誘導のフォワード計算には、Hamano(2002)により定式化された方法を用いた。 収束した定常解からは、上記のLLSVP領域の下面には、高電気伝導度のpPvが多量に存在するブロックが存在し、LLSVPの成因に重要な役割を果たしていることが想定される。pPvの存在は、この場所の温度についても制約を与える。インバージョンで決められたコア表面のトロイダル磁場からは、D”層の平均電気伝導度の範囲を見積もることができた。さらに、モデリングの過程では、地表で観測される地球の主磁場を、マントル不均質で生成された磁場とコア起源の磁場に分離することができる。分離されたコア起源の磁場からは、これまでダイナモシミュレーションやコアダイナミクスの研究で謎であった、いくつかの問題が解決され、地球コアの活動と磁場生成過程に、新しい知見を付け加えることができた。
キーワード: 電気伝導度構造、D”層、マントルダイナミクス、LLSVPs
世話人: 牧野 淳一郎

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