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社会が将来の気候変動への対策を考えるためには、より信頼のおける気候変動予測を得ることが重要である。このためには、将来予測に用いられる気候モデルの信頼性を評価するとともに、モデルの不完全性をふまえた上で、確率的な将来予測を行うことが重要である。確率的予測のためには、モデルに含まれる様々な不確実性を幅広く考慮し、数多くの数値実験を実行する必要がある。本研究では、これまでに得られた様々な気候モデル実験の集まり(気候モデルアンサンブル)を利用し、新たな手法を用いて、その信頼性評価を行う。ここでは、近年の気候研究で多く用いられている「結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP3)アンサンブル」を利用する。これはIPCC第四次評価報告書に向けて、世界の気候研究機関が同一の境界条件を与え、過去の気候変化再現や将来気候予測実験を行うことで作成されたものである。本研究では過去の気候変化再現実験の結果を観測と比較することで、モデルの評価を行う。ここで用いた新たな手法は、複数のシミュレーションの中に、現実(観測値)がどのように含まれるかを、統計的に評価するものである。解析の結果、前述のCMIP3アンサンブルの信頼性は十分高いことが分かった。一方、このような複数モデルによるアンサンブルに比べて、単一の気候モデルによって作成されたアンサンブルは、比較的信頼性が低いことが分かった。近年の多くの研究がCMIP3データにもとづき、気候変化メカニズムの解明や、将来の気候変化予測を行っている。本研究の成果は、これらの研究に信頼性を与えるものである。
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