日時: 2011 年 3 月 30 日(水) 16:00-17:00
場所: 神戸大学自然科学総合研究棟 4 号館 809 号室
講演者: 中村 真季 (東京大学)
世話人: 木村 宏
タイトル: Effects of a light reflecting layer to the response of piezoelectric PZT
abstract: 飛翔体による宇宙塵のその場観測は1960年代から行われており,これまで様々な領域で観測を行っている.
近年では,衝突電離型検出器( Impact ionization detector: IID)が主流になっており,計測精度もよく,その場で組成分析も可能なものもある.
しかし,IIDでは衝突速度が約1km/sec以下の観測には不向きである事,また,太陽近傍での観測が困難である事が知られている.
そのような理由から水星探査機BepiColomboに搭載されている宇宙塵観測装置MDMには,圧電性PZTが検出器に採用されている.
 圧電性PZT素子は,低容積,低コスト,高圧電源が不要,構造がシンプルという宇宙機に搭載するには利点となる特徴を持っている.
何よりも広い速度範囲で検出感度を持っている.
しかし,温度がキュリー点(約300℃)の半分を超えてしまうと分極が保たれなくなり,計測が出来なくなるおそれがある.
そこで,PZT素子の表面にポリイミド樹脂(以下:白色塗料)を塗布することで,太陽光を反射させ温度上昇を軽減させる処置が行われている.
しかしながら,白色塗料が衝突信号にどのような影響を及ぼすのか十分には分かっていない.
白色塗料を塗布した場合の出力変化を確認する目的で実験を行った.
 実験は,ドイツのマックスプランク核物理研究所(MPI-K)の静電加速器を使用して行った.
日本の唯一の高速ダスト実験専用の静電加速器である東大重照射施設(HIT)では速度の上限が低くいため,広い速度範囲での実験を行うためには,MPI-Kの静電加速器での実験が必須であった。

MPI-Kでは白色塗料を塗布した素子に微粒子を超高速で衝突させ実験をし,以上に述べた事を含め,以下の2つを確認した.

1) 白色塗料の有無による出力波形の変化
白色塗料を塗布した素子と,そうでない素子での信号波形を確認した結果,両者に違いがあることが明らかになった.

2) 電極に衝突した際と電極から離れた所に衝突した際の出力波形の変化
電極から遠ざかるにつれて,出力が弱まる事が確認された.

本講演ではこれらの実験結果について講演する.