日時: | 2010 年 8 月 11 日(水) 15:00-16:00 |
場所: |
神戸大学自然科学総合研究棟 4 号館 809 号室 |
講演者: | 高橋 淳一 (NTTマイクロシステムインテグレーション研究所) |
タイトル: | 生命ホモキラリティーの起源と宇宙空間の円偏光放射 |
abstract: |
炭素質隕石や彗星中に多様な有機物が検出されており,これらの有機物と地球上生命体
におけるホモキラリティー(L-アミノ酸,D-糖優位)起源との関連が議論されている。その
シナリオとして,分子雲中の星間塵上で無生物的に生成された有機物に,宇宙空間に存在
する円偏光光子やスピン偏極電子などの不斉エネルギーが作用した結果,不斉反応が誘起
されD/Lの偏りが生じたとする仮説が提唱されている。円偏光光子は中性子星の強磁場に
捕獲された電子からのシンクロトロン放射として,またスピン偏極電子は放射性崩壊原子
核や超新星爆発に伴う高密度中性子球からのベータ崩壊電子としてそれぞれ放射される可
能性があるとされているが,実際の観測はまだなされていない。しかし最近,大質量星形
成領域の赤外線観測から,円偏光成分が広い範囲で分布しているという報告があり,この
「ホモキラリティーの宇宙起源シナリオ」が改めて注目を集めている。 このシナリオを検証する地上模擬実験として,星間物質表面で無生物的に生成される有 機物(光学的に不活性)を模したラセミック(D/L等量)なアミノ酸水溶液,アミノ酸固 相薄膜,アミノ酸前駆体を含む複雑有機物などに,宇宙空間の不斉エネルギーを模した円 偏光自由電子レーザーあるいはスピン偏極電子線であるベータ線を照射することにより,光学活 性が発現するかどうかを確かめる実験を行っている。講演では,これら不斉エネルギーが 誘起する可能性のある不斉反応について議論するとともに,現在進行中の不斉発現実験の 現状を報告する。 |