アブストラクト |
近年の理論研究により、強いXUV放射に曝された惑星大気の熱的散逸は赤外活性分子による放射冷却 (Yoshida and Kuramoto, 2020, 2021; Yoshida et al., 2022) や電子遷移反応に伴う原子の放射冷却 (Nakayama et al., 2022) により抑制され、熱的散逸率が大きく減少することが示されている。この熱的散逸率の大幅な下方修正は、これまで構築されてきた惑星大気の標準的な進化シナリオに再考を迫るとともに、惑星大気の初期進化フェーズにおいても非熱的散逸が重要な役割を果たした可能性を示唆するものである。現在の地球の数倍程度のXUV放射に曝された地球類似惑星の大気は、遅進流体力学的散逸状態に陥って膨張し、大気上端が惑星半径の数倍以上に達することが流体モデルにより予測されていた。本講演では、遅進流体力学的散逸状態にある膨張惑星大気に非熱的散逸を考慮することにより、膨張大気が冷却して収縮すること、熱的散逸率が非熱的散逸率の増加に応じて減少することをDSMCモデルを用いて示す。 |