アブストラクト |
金星は厚い雲に全球を覆われているため、その雲より下の様子を探るのは容易ではない。しかし、1980年代終わり頃、近赤外線波長に大気「窓」が発見され、リモートセンシングにより中下層大気を研究することが可能となった。二酸化炭素の光吸収が弱まる「窓」波長では下層の高温大気が発する赤外線が宇宙空間へ漏れ出し、金星「夜面」でそれを観測することができるのである。その「窓」を利用した最初の探査機はGalileoで、木星へ向かう途中、1990年に金星をフライバイし、夜面で複雑な「雲のシルエット」を捉えた。21世紀になり、ESAのVenus Expressが2006年に金星に到着、「窓」を利用した連続モニターを行う最初の探査機となった。そして、2010年には日本のPLANET-Cが金星に向けて打ち上げられ、その主力観測はこの「窓」波長における中下層大気の観測である。本セミナーでは、「窓」の生じる原理を説明し、Galileo - Venus Express の成果を紹介、そしてPLANET-Cにかかる期待を解説する。 |