アブストラクト |
現実的、理想的、あるいは倍増CO2(二酸化炭素)の境界条件下で大気大循環モデル実験を行い、ストームトラック(総観規模の擾乱の活動度が大きいところ)に関する幾つかのテーマを議論する。
まず、南半球冬季のストームトラックの東西非対称性の形成について調べた。 熱帯または中緯度の海面水温(SST)の東西非対称性を除いた実験の結果、中緯度のSSTの南北勾配は下層の総観擾乱に伴う熱フラックスを強く制御している一方、熱帯のSST分布が亜熱帯インド洋からニュージーランドにかけて伝播する定常ロスビー波を通じて対流圏上層のストームトラックおよび定常波に大きな影響をもたらすことがわかった。この波は南東アジアの深い対流からの絶対渦度フラックスによって生成されていた。
第2に、前述のSSTに対するストームトラックの応答を、水惑星実験を使って検証した。これにより、中緯度のSSTが下層のストームトラックに、また熱帯のSSTが上層のストームトラックと定常波に、影響を及ぼすことをより明確に示すことができた。最後に、CO2倍増実験について調べた。温暖化時、赤道と極の間の地表面温度差の減少に伴ってストーム活動が弱くなるという先験的な推測に反して、ある実験では太平洋と南半球のストームトラックはむしろ強化された。しかし、与えたSSTに対するストームトラックの応答の鋭敏さは考慮しなければならないだろう。 |