アブストラクト |
近年, 北極海で海氷の占める面積が減少していることが指摘されているが,なかでも西部北極海の Northwind 海嶺から Chukchi 海台付近にかけての海域は, 海氷の後退が著しい. 原因の一つとして, この海域では周囲と比べて比較的高温の海水が亜表層に分布していることにより, 海氷が融け易く凍り難い状態にあることが挙げられる.この亜表層に分布する海水は, 夏期に陸棚域を経由して太平洋から流入したものであると考えられているが, 何故この場所に集中的に存在するのか, その理由が明らかでない。
この問題を考えるための最初の糸口として, Northwind 海嶺の斜面に見られる特徴的な流れの構造(傾圧構造)に着目し, 線形準地衡流二層の簡単な解析モデルを適用して流れ場の説明を試みた. この流れ場は、夏期に陸棚域で生成された高温の海水を Northwind海嶺付近へ選択的に運ぶ役割を担っている可能性があり, この海域の海氷減少を説明する上での有力なメカニズムとなり得る. |