アブストラクト |
現在の火星は非常に寒冷 (平均気温 -56 度C) な気候を持つ惑星である. 大気の主成分は二酸化炭素 (96 %) であり, その圧力は非常に低い (6 mbar, 地球の 1/200). しかしながら中低緯度域には地球の谷地形や堆積層に似たものが存在し, それらは様々な地質学的年代を持つ. このため火星では過去において液体の水が存在するような温暖な気候が繰り返し実現されてきたと考えられている. 温暖な気候は現在に比べてはるかに高い圧力を持つ二酸化炭素大気の強力な温室効果によって実現していた可能性が高い. 二酸化炭素大気圧と地表温度の大きな変動を引き起こす機構に関してはこれまで様々な研究がなされて来たが, どのようなメカニズムによって気候変動が繰り返されたのかということは大きな謎である. 火星気候変動の謎を明らかにすることは, 地球型惑星の表層環境がそもそもどのように決まるのかということにつながる非常に重要な問題である.
そこで本研究では, 従来考えられて来なかった水の氷の効果を考慮した気候モデル (2 次元エネルギーバランスモデル) を構築し, 火星気候変動のメカニズムについて調べた. これにより気候変動の新たなシナリオ(CO2-H2O アイスアルベドフィードバック) を提案する.
参考文献と URL:
Yokohata, T., M. Odaka and K. Kuramoto, Role of H2O and CO2 Ices in
Martian Climate Changes, Icarus, in press, 2002.
http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~yokohata/work/paper/icarus_2002/main.pdf |