アブストラクト |
日は西に傾き、地上にある全ての物の影を長くしている。長く短い一日が終った。想像を越えた景観の変貌に取材中は驚きの連続であった。今まで、これほど一つの山を注意深く観察しそして、山を感じたことは無かった。自分の足で地面を踏み締め地熱を感じ、山々に響きわたる蒸気の音を聞き、無数の火口によってまるで月面のように代わり果てた大地をこの目に焼き付けた。『動かないと信じていた物が動く』という事実を受け入れるのにそう長い時間は必要ではなかった。それは、生きている地球との出会いでもあった。人間は、地球という惑星に住んでいることを頭で理解していながら、日々の生活では忘れている。自分の存在を約束してくれる絶対的な存在であるはずなのに。そんな、あたりまえのことを有珠山は思い起こさせてくれる。自分は地球人であることを。 (文/中神 雄一) |