| アブストラクト |
コンドルールはオリビンやパイロキシンなどのケイ酸塩鉱物からなるSub-mm程度の大きさの球状の粒子で、原始太陽系円盤内で短時間に高温に加熱されて熔融して出来たと考えられている。コンドルールは始原的隕石(コンドライト)に多く含まれる(体積比で20-80%)ほか、81P/Wild(ヴィルト第2彗星)からも見つかっていることから[1]、原始太陽系円盤の広い範囲で形成されたと考えられる。コンドルールは26Al-26Mg年代や、形成した環境の酸素同位体比や酸化還元状態を保持していることから、コンドライト母天体が形成される以前の原始太陽系円盤の進化を制約する上で有用である。 コンドルールの酸素同位体比には、以下の特徴がある。
1) 一つ一つのコンドルールの酸素同位体比は、ほとんどの場合はオリビンやパイロキシンから非晶質のガラスまで均質な値を持つ[2]。これは、コンドルール形成の熔融時にメルト内部の酸素同位体比が均一化され、結晶が晶出し始めてからガラスが固化するまでにメルトの酸素同位体比は大きく変化しなかったことを意味する。
2) コンドルールの中に明らかに異なる酸素同位体比を持つ結晶が見つかる事があり、最後のコンドルール形成時に熔けずに古い酸素同位体比を保持したと考えられる“熔け残り粒子”と解釈されている。隕石によっては50%近いコンドルールに熔け残り粒子が見つかる事から[2]、多くのコンドルールは複数回の熔融を経験したと考えられる。
3) 非炭素質コンドライト(Non-carbonaceous Chondrite, NC)のコンドルールは形成環境の酸化還元状態に関わらず一様なΔ17O値(=δ17O - 0.52×δ18O)を示す傾向があり、普通コンドライト(OC)やエンスタタイトコンドライト(EC)のコンドルールのΔ17O値はそれぞれ+0.5‰と0‰付近に分布する[3,4]。この値はそれぞれのコンドルールが形成した領域のダストの典型的なΔ17O値を反映しており、酸化還元状態の変動はダストの濃集によって生じたと考えられる。
4) 一方で、炭素質コンドライト(Carbonaceous Chondrite, CC)のコンドルールのΔ17O値は形成環境の酸化還元状態と相関して変動しており、還元的な環境で形成したコンドルールのΔ17O値は約-5‰を示す一方で、酸化的な環境で形成したコンドルールのΔ17O値は約-2‰、あるいは約+1‰を示す[2,5]。酸化的な環境で形成したコンドルールが高いΔ17O値を示すのは、高いΔ17O値を持つH2O氷を含むダストが濃集したことで、酸化的で相対的に高いΔ17O値をもつ形成環境が生じたと考えられる[4]。Δ17O値が+1‰を示すコンドルールはCR隕石やTagish Lake隕石、81P/Wild彗星など遠方で形成した母天体から見つかる事から、これらはコンドルール形成領域の中でも最外縁部で形成したと考えられる[6,7]。 隕石タイプ毎の系統的な酸素同位体比の違いは、コンドルール形成当時の原始太陽系円盤の酸素同位体比には空間的な違いがあったことを示している。隕石タイプ毎のコンドルール酸素同位体比の分布を調べることで、原始太陽系円盤内部でのSub-mmサイズの固体粒子の移動の様子を調べることが出来るかも知れない。
コンドルールの酸素同位体比はデータ数が多く複雑で、最近は一部のデータのみを扱って間違った引用をされる例がみられる。本発表では、生データを示しつつ、コンドルールの酸素同位体比が全体としてどうなっているのかを丁寧に説明したい。 |