アブストラクト |
中間質量ブラックホールが球状星団中に存在するか否かは長年議論になっている。中間質量ブラックホールが星団内で形成されるには、星同士が繰り返し合体する「暴走的合体」が起こる必要がある。星団の密度が十分に高くなり、星の暴走的合体が起こると、1000太陽質量を超える「超大質量星」と呼ばれる星が形成され、それが最終的に中間質量ブラックホールへと進化する。このような過程を再現したこれまでの数値シミュレーションでは、星の暴走的合体から超大質量星形成は起こるが、超大質量星が星風によって質量を失ってしまい、その結果、恒星質量ブラックホールしかできないという結果であった。しかし、これらのシミュレーションは初期に球対称で力学平衡なモデルに対して行われている。我々は、星の合体まで追える高精度の積分法を用いたN体計算コードと流体計算コードを組み合わせた新しいシミュレーションコード「ASURA+BRIDGE」を開発し、それを用いて、星団の形成過程から星の暴走的合体を同時に計算した。形成中の星団では、星間ガスの存在によって高い密度が保たれ、その中で起こる暴走的合体によって、最大10,000太陽質量の超大質量星が形成された。それらは最終的に3,000--4,000太陽質量の中間質量ブラックホールへと進化すると考えられ、球状星団中に中間質量ブラックホールが存在することを示唆する結果である。 |